第4章 2度目の事件
低い声の男
「最後のチャンスだ。金のありかを言え…」
それに自分の安全の為だけではなく、この人に人殺しの組織に残って欲しくなかった。
でもこのまま黙っていて雅美さん、いや明美さんが死ぬのは嫌だ。
「……っ」
この後の返答でどうなるか決まる。
姿は見えないので私はただ次の言葉を待った。
宮野 明美
「あまいわね。私を殺せば永遠にわからなくなるわよ…」
そして明美さんが選んだのは最後まで抵抗する道だった。
低い声の男
「あまいのはお前だ。大体の検討はついている…」
宮野 明美
「………」
低い声の男
「それにさっき言っただろ?最後のチャンスだと」
「!!」
その言葉と共に金属音が鳴った。
この音はハワイで何度も聞いた事があるあの音、撃鉄を起こす音だ。
それに気づいてからすぐの事だった。
船の汽笛が高らかに鳴り響き、その音に紛れさせるように引き金が引かれた。
「っ!」
口元を両手で押さえ声を押し殺す。
目からは涙がボロボロ零れ落ち、とにかく音を立てない事で必死だった。
低い声の男
「ずらかるぞ」
男2
「はい」
男達はそんな私に気づく事はなく、足早に立ち去って行く。
そして車が走り去る音を聞いた私はすぐにコンテナの影から飛び出した。
「あ!」
明美さんはすぐに見つかった。
本当に私が隠れていた場所のすぐ側でやり取りをしていたようで、一歩外に出ると立ちすくむ明美さんと視線が交わる。
「明美さ…」
もしかしたら無事なのかもしれない。
そう思って急いで近寄るが、明美さんは力が抜けたように崩れ落ちてしまった。