第4章 2度目の事件
警察の目さえ欺く事ができる組織。
あの時聞いた凍てつく様な男の声は未だ頭から離れずにいたが、明美さんを殺した彼の事を私は誰にも話していなかった。
もちろんそれは明美さんとの約束もあったが、それだけならお兄ちゃんには話していただろう。
でも話さなかったのには約束以外にも理由がある。
コナン
「…あんまり抱え込みすぎるなよ」
ポンと頭を軽く撫でてから立ち去っていく私の小さなお兄ちゃん。
こうして気遣ってくれているお兄ちゃんも、最初は私が見聞きした事を聞き出そうとしていた。
興味からではなく私の安全の為だとわかっていたが、口を開かない私を見て今ではこうして話すのを待ってくれている。
なぜお兄ちゃんにすら話せないのか。
その答えは単純で、警察やお兄ちゃんに話して捜査が始まってしまうと組織も気づくかもしれないと思ったからだ。
もしそうなると明美さんが死ぬ前に関わった人物を調べ、遅かれ早かれこの探偵事務所に辿り着くはずだ。
そこで江戸川 コナンなんて存在しない子供の事や、例の組織が同じなら先日毒薬を飲ませた工藤 新一の妹がいるなど不審点が多すぎる。
あの時の男の殺し慣れている様子からするとおじさんや蘭姉ちゃんまで巻き込んで、全員殺されるなんて事になりかねない。
だから私はその時が来るまで見た事を1人で隠し続ける事を選ぶと決めた。
いつまで抱えきれるか分からないこの重い秘密を、全て吐き出してもいいと思える人に出会える事を信じて。