第4章 2度目の事件
後ろのタクシーを確認するには振り返るしかないだろう。
「………」
そっと振り返って後部座席へと目を凝らす。
もしこのタクシーを追いかけてきていたとしたら、今かなり危険という事になるのではないか。
震えそうになる手を握りしめ、緊張に包まれている私の視界が捉えたのは安心できる人物だった。
「…蘭姉ちゃん?」
運転手
「ああ、知り合いか」
それなら良かったと安心したように言ってくれるこの人は優しい人なのだろう。
運転手
「お姉ちゃんと合流するかい?」
「大丈夫です。前にいるお姉さんと先に合流しなきゃいけないので…」
運転手
「そうかそうか。じゃあ安全運転で最後まで追いかけようかね」
「お願いします!」
すぐ後ろに蘭姉ちゃんがいる。
それに蘭姉ちゃんは隣に声をかけている様子が見られた。
つまり隣には座席よりも背が低い人が座っているということ。
そんなのお兄ちゃんに決まっているのだ。
だから私は安心できていた。
「………」
でもそれと同時にとある事を確信してしまう。
上に行ったはずの2人が降りてきてあそこにいるという事は、既に何かがあったのだ。
一瞬、タクシーに乗り込んでどこかに行こうとしている私を追いかけてきたのかとも思った。
でもそれならもう何かしらの方法でこのタクシーを止めているはずなのでその考えは違うとすぐに否定する。
「………」
こうなるとあの女性が悪い人だと仮定して考えた方が早いだろう。
まず考えるべきはあのスーツケースの中身だ。