第4章 2度目の事件
それにこの場を早く離れるには車移動が必須だろう。
「あ!」
移動手段は自分の車かタクシー。
そう思ってとりあえずすぐ近くのタクシー乗り場へと目を向けると、長蛇の列の最後尾にスーツケースを所持していないがあの女性がいた。
だが見つけたからと言って考え無しに声もかけられない。
だから私は自然にその後ろへと並ぶ事にした。
そしてそのまま気づかれる事もなく女性が乗り込んだタクシーを見送り、次に来たタクシーの運転手に前のタクシーを追うよう頼んだ。
運転手
「………」
「………」
静かな車内。
私は外の景色を見ながらこれからどうするのかを悩んでいた。
もしあの状況で雅美さんが生きていて、尚且つ高校生だと偽っていたのならその目的は何か。
その問いの鍵となるのが恐らくあの大量のスーツケースだ。
どこかの部屋から何かを大量に運び出し、誰かに渡したのかほんの僅かな時間で手放した物。
運転手
「お嬢ちゃん、本当にあの車追っていいのかい?」
「え?」
あの荷物の中身も予想できないのに追いかけてよかったのだろうか。
そう少し焦り始めた時、運転手が声をかけてきた。
「えっと、何でですか…?」
心を読んだかのような質問に俯きながら冷や汗が伝っていく。
だがそんな私の様子には気づいていないのか、心配が滲んだ声色で言葉を続けた。
運転手
「いや。なんか後ろのタクシーも追ってきてるみたいでね」
「!」
その言葉に顔を上げると、運転手はバッグミラーへと視線を向けている。
私の場所からはバッグミラーを覗いても後ろをしっかり見る事はできない。