第4章 2度目の事件
もちろん私も手伝おうとしたのだが、その前に違和感に気づいてしまって動けなかった。
「……あの顔」
目の前にいるどう見ても蘭姉ちゃんよりも年上の女性。
顔は薄く色付いたサングラスとメイクのせいで分かりづらいし、服装も完璧に大人の女性といった雰囲気をしている。
だから私以外にこの女性に引っかかっている人はいないし、もしかしたら私のこの違和感も勘違いかもしれない。
女性
「本当にすみませんでした…」
全てのスーツケースを積み直して頭を下げた女性は出口へと足を進めていた。
小五郎
「さてと、じゃあ8階に行くか」
コナン
「早く早く!」
お兄ちゃんに急かされて2人はエレベーターに乗ったが、私は乗らなかった。
蘭
「音羽?」
「ごめん!私トイレ行きたいから3人で行ってきて?」
コナン
「と、トイレ…?」
きっとあの表情からすると、なんで今なんだとでも思っているのだろう。
そんなお兄ちゃんには悪いが、ここは引いてくれないとあの女性を見失ってしまうだろう。
「早く上に行った方がいいでしょう?私の事は気にしないで行ってきてください!」
小五郎
「じゃあここで待ってるんだぞ?」
「はい!」
守るつもりもない約束をしてエレベーターを見送る。
そしてすぐに出入り口へと駆け出した。
そう、私はおじさん達がいる前でお兄ちゃんに事情を説明できないと判断して危険を承知で別行動を取る事に決めたのだ。
「遅かったかな…」
外に出て辺りを見渡すがなかなかあの女性を見つけられない。
そもそもあの荷物だ。
まだ遠くへは行っていないはず。