第4章 2度目の事件
この人が私の為にそう言ってくれているのはもちろんわかっている。
でもあのコナンくん状態のお兄ちゃんの元に連れて行ける訳がないのだ。
「お兄さんありがとう。でも中に入らない事にしたから大丈夫だよ!」
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「…とか言って俺がいなくなった後に入るんじゃねーの?」
「ちょっと、初対面でそんな疑う?」
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「はは!冗談だよ」
1人で入らないならそれでいいと彼は笑ってくれた。
中に入るのは怖かったし、お兄さんに言った通りここでお兄ちゃんを待とう。
入口から端の方へと移動する。
するとお兄さんもついて来た。
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「ここで待つってことね」
「うん。だからお兄さんも気にしないで行っていいよ」
?
「わかったわかった。じゃあちゃんとここで兄貴を待つんだぞ?」
「はーい」
私の返事を聞き遂げてからお兄さんはヒラヒラと手を振り、去っていった。
お互い名前も知らないのに優しくしてくれたお兄さん。
彼と話をして冷静になった私は何となく悟ってしまった。
ここに雅美さんはいないだろう、と。
雅美さんは上京して来たばかりの高校生だ。
人は見かけで判断してはいけないというが、あの人も私と同じようにここに入るのは怖いと思う。
それに父親が殺害されてから行方が分からない高校生が本当にこんな所にいるのだとすると、犯人と共にいる可能性以外有り得ないだろう。
「…人の出入りはそこそこ」
先程から入店している人もそこそこ多いのだ。
もし犯人といるのなら何かしら助けを求めるはず。