第2章 留守番後の衝撃
もう子供が出歩く時間ではないのだが、迷子だろうか。
不思議に思いながらも、特に警戒せずに門へと近づく。
「ねぇ、僕」
子供
「!」
私が声をかけると、真ん丸な目がこちらへ向けられた。
よく見ると頭には包帯をしている。
「迷子なの?怪我もしてるみたいだし…」
雨音で声が掻き消されないよう目線を合わせ、門越しに問いかける。
子供
「迷子なんかじゃねぇ!俺だよ、音羽!」
「何で私の名前…」
こんな子知らないはず。
子供とはいえ、自分が知らない人に名前を知られているという事実に不信感や嫌悪感に近いものを抱いたらしい。
無意識に一歩後ずさってしまう。
子供
「まずここを開けて…」
これからどうするべきなのか。
働かない頭を動かして考えようとした時だった。
「わ!」
子供
「へ?」
すぐ隣の家から大きな爆発音が響いた。
何事かと2人揃ってそちらへと顔を向けると、咳き込む音が聞こえてくる。
爆発音が聞こえてきた場所と、この咳き込む声。
そこにいるのが誰かはすぐにわかった。
「はか…」
子供
「あ、阿笠博士…」
「!」
隣に住んでいるのは阿笠 博士。
発明家をしている彼の事を私とお兄ちゃんは博士と呼んでいた。
だからいつも通り博士と声をかけようとしたのだが、私の声に被せて目の前の子供も博士の事を呼んだのだ。
阿笠博士
「ん?」
爆発で道路まで飛ばされたらしい博士から私の姿は見えない。
だから博士は目に入ってきたこの怪しい子供に反応していた。
名前も知っているし、博士の親戚の子ではないだろうか。