第3章 毛利探偵事務所
阿部 豊
「なめるなよ!このクソガキ!!」
それからは余りにも一瞬のできごとだった。
気がついた時には阿部さんはお兄ちゃんに掴みかかっており、その手は首元へと伸びている。
阿部 豊
「倒産寸前の会社の社長の気持ちがお前にわかるか!?そもそも私の口車にのってあんな保険に入ったあいつがバカなんだよ!!」
コナン
「ぐっ…」
先程の穏やかさが嘘のように豹変した阿部さん。
手の力はどんどん増しているようで、お兄ちゃんが苦しそうな声を上げた。
阿部 豊
「私に殺されるとも知らずになぁ!!っ!」
そして本気で首を絞め殺そうとした時、お兄ちゃんが手に噛み付いた。
阿部さんは突然の痛みにちょうど私が隠れている車へとお兄ちゃんを投げ飛ばす。
コナン
「…っ」
「ひっ…」
お兄ちゃんがぶつかった衝撃で、車が振動したのが背中越しに伝わってくる。
こんなのおじさんに連絡できる状態じゃない。
でも私じゃ太刀打ちできないだろう。
このまま目の前でお兄ちゃんが殺されるのを見ているしかできないのかと悲観的になりそうになったそんな時だった。
「タイヤ…」
暗闇の中転がって来て、私の足に当たって止まったタイヤ。
お兄ちゃんがぶつかった車は後方にスペアタイヤを積んでいる物だったのだろう。
それがぶつかった拍子に外れてしまい、ここまで転がったといったところだろうか。
阿部 豊
「これが反撃か?これくらいしかできないのに、わざわざ殺されに来るなんてバカなやつだ」
コナン
「………」
阿部さんは噛まれた手を庇いながらお兄ちゃんへと迫る。
もう考えている時間はない。