第3章 毛利探偵事務所
小五郎
「はい、毛利探偵事務所です…って目暮警部じゃないっすか!」
電話の相手は警視庁の警部さんだった。
蘭姉ちゃん曰く、この警部さんはおじさんが刑事をしていた時にお世話になっていた1人らしい。
小五郎
「ええ!?阿部のアリバイが崩れた!?」
「!」
蘭
「え!」
あの鉄壁ともいえるアリバイがこんなにも早く崩れたなんて驚きだ。
思わず蘭姉ちゃんと顔を見合せたが、またおじさんの声へと意識を戻す。
小五郎
「はい、はい。じゃあ今から空港に行けばいいんですね?」
「空港…?」
現在の時刻は7時過ぎ。
こんな時間になぜ警視庁ではなく、空港へ呼び出すのだろうか。
不思議に思って声を出した私に蘭姉ちゃんが理由を教えてくれた。
蘭
「阿部さんがね。会社を人に任せてしばらく旅行するらしくって、その出発が今夜の9時みたいなの」
「それって…」
このタイミングで海外なんてまるで海外逃亡としか思えない。
海外に行かれては日本の警察は簡単には手出しができない為、それに間に合うように警察側も動いていたのだろう。
その頑張りのお陰でこうしてアリバイを崩したのだから、本当に日本の警察はすごい。
小五郎
「さっさと準備して行かねーと」
電話を切ったおじさんは、そう言いながらジャケットを羽織った。
お兄ちゃんがいたらついて行きたがっただろうなと他人事のようにその姿を見ていたら、蘭姉ちゃんが私の手を取る。
蘭
「お父さん!私達もついて行っていい?」
「へ?」
予想外すぎる言葉。
まさかお兄ちゃんじゃなくて蘭姉ちゃんがこんな事を言い始めると思わなかった。