第1章 ご主人様と猫。猫のお話。
「二千万!」
大きな声に悠は我に返る。
薄暗い会場内に男性の声が響いた。明るい舞台からは声の主をハッキリ見る事は出来ないが、身なりの整った男性が手を挙げているのが見えた。
「三千万!」
横から声が上がる。
やはり男性の声。
「四千万!!」
また違う声がした。
「五千万!!」
「七千万!」
「七千五百」
「八千!」
順調に値は上がり、会場が盛り上がりを見せる。
「八千五百!!」
男性の声が大きく響いた。
少し小太りの男性が手を挙げている。
「八千五百。八千五百万です!他にいらっしゃいませんか?」
手を上げた男性は笑った。
では、と声を上げる司会者の声に、ニヤリと笑うその笑顔。ぞくりと背筋が泡立つ。
「 二億 」
会場の後方から静かな声が響いた。