第1章 ご主人様と猫。猫のお話。
そんな悠に構わず、三途は続け様に先に受け取った鍵を持って悠に見せる。
「痛てェだろ、その手首」
まだバクバクとなる心臓。
一瞬何を言われているのかわからないくらいには混乱はしていたが、手首を顎で指されて手枷を見た。
「お前が逃げねェって言うんなら、そんな無意味なもんはいらねーだろ」
悠が反応するよりも早く、三途は鍵を鍵穴に差し込む。カチッと小気味良い音が鳴った。
外された手枷は重たい音を立てて床に転がり落ちる。その下にある悠の手首は擦れて赤くなっていた。
「酷ェ事しやがるな」
赤く擦れた傷口を見て三途はひとり呟く。
悠はその言葉に違和感を感じて僅かに目を見開いた。
彼の指先が、赤い傷口にそっと触れる。
触れられた傷口がピリリと痛んで、身体が小さく跳ねた。
「……痛むか?」
そのまま三途は悠の掌を取った。
痛みよりも恐怖に身体がすくむが、悠よりも大きな男性の掌は、意外にも優しく包み込むようにそっと悠の手を持ち上げる。ゴツゴツと骨張った男性特有の手。けれど、その指先は細く長く、
ーー温かい。