第2章 ◇好きと勝手と裸の二人◇
「今度は俺が、洗ってやるから。そしたら、入れて」
「…」
嫌だよ。洗われるのも、おまえと一緒に湯船も。
て思っても、たとえ言ってもやめないでしょ、どうせ。
好きにしたらいいよもう…。
とりあえず気にせず、俺はお湯を堪能してた。アタマ持ってかれて、浴槽の縁に首引っかけた状態だけど。勝手にシャンプー始まったし。
「~♪」
ムカつくくらい透き通った鼻歌に
ヤバいくらい巧みな指の動き。
絶妙なリズムと力加減は、そこらのカリスマ美容師なんて軽く凌いでる気がする。負けたくないのに、問答無用で快楽物質が体内を駆けめぐっていくのがわかる。
…だから嫌なんだよ。
この人に何かやらせたら
少しでも本人がその気になってやらせたら
プロが仕事すんの嫌になっちゃう玄人キラーだもん、このド素人。
なんで
こんな、何でもできんの。
なんで
こんな、何でもできるくせに
なんにもできないの。