第1章 ◇言っとくけど俺よりひどいから◇
「怒った?」
「…」
「カズ」
ほらね
こうしてちょっと冷たくすれば、とたんに猫みたいにすり寄って甘えてくる。
「…ごめん。腰、痛い…?」
「…」
別に。ていうか何で答えを聞く前に謝んの?
謝罪の安売りが一番嫌。気持ちこもってる気がしないから。
そもそも、あーたに謝られる覚えは一切ないし。
「頭、別にいい。俺は何でも、気にしないよ」
俺の髪に手を伸ばしてきたその腕を、阻むように捉えた。
「っ」
戸惑って言葉を失うカレの手を、下からそっと握り直す。
「俺は、気にするの」
「カズ…?」
「…シャワーいこ」
「え。え?」
断りはしない。ただ俺から、しかもこんな時間に誘ったりしないから、素直について来たけどあからさまに困惑してる(笑)。
でも違うよ。ソッチのお誘いじゃないから、残念だけど。あんだけヤッといて誘うわけないだろ。
シャ―…
「んっ!冷たっ」
「そこ、座って」
「え?あ、うん…」
俺はどうでもいい。でも、気になるんだよ。
あなたの頭は。
人のこと言えないレベルの寝癖。見せたくない。こんな程度、ネタにされたくない。他の、誰にも。