第3章 ◇赤目のウサギはよく眠る◇
「けほっ…」
「…もう何も出ないから」
「え」
「…」
「え、いーのっ?」
「ダメ」
「ヤッター!」
ダメって言ったのに
あり得ない体温が俺を包み込んで
手首ちぎれそうな勢いで浴槽から連れ出されて、めちゃくちゃ雑に拭き殴られて
「!?」
信じられない。
軽々と持ち上げられた。つかこれ、アレだな。俗にいう“お姫様抱っこ”。でしょ?これ。
怖いわぁ、この人の底力…。
膝大丈夫なのかとちょっと心配にもなりつつ
さすがに怖いからしがみついてたら、抱き返したと勘違いしたらしい。
何かますます調子のせたみたいで
朝っぱらから、しかもせっかく風呂入ったってのに
「あっ、あ、カズ、カズ!」
「うっ…あ…っ」
「ああ…っ!!」
せっかくキレイになった身体、隅々まで汚されました。ええ。
マジで最っっっ悪!
世間一般にイメージないかもしれないけど、私の中では完っ全に絶倫、この人。コッチに関してはマジで精力オバケっ!出力するもんがないとは言ったけど、入力だって許可してないのに。不法侵入甚だしいよ。
「クカー♪」
「…」
ま、燃え尽きるの早いけど。そこはね?絶対的な体力持久力は精力でカバーしきれないみたい(笑)。
さて。
本日は五人での収録。もちろんこの人も仕事。
だけど
知らないよ、俺は。起こす義務も義理もないし。うん。
先に準備して家を出て、俺はいつも通り仕事に向かう。常識よ。だって社会人だもん。
ああ、もちろんもっぺん体を清めてからね?軽くシャワーだけね、さすがに。一瞬で準備終えてとっとと出たよ。
あ、大丈夫。そこは。
もうこのためって言ってもいいな。
いつの間にか、うまいことのせられて奪われたうちの合鍵。返してもらわないままでいるのは、このためよ。
うん。