第1章 異世界からこんにちは
「おい、聞いているのか?」
ぶつぶつ考察を呟いていた私に、ようやく露伴先生の声が届いた。
「聞いてました」
「ははぁ、嘘だね!」
「嘘ですね……」
潔く認める私を見て、一つため息を吐く露伴先生。
ごめんなさいと心の中で彼に謝っていると、彼は、
「あまり信じられないなら、スタンドを出してみればいいんじゃあないか?」
と提案してきた。
「出し方、なんて……分からないんですけども……」
ごにょごにょと返事をする私に、
「スタンドを出そうとイメージしながら、名前を叫んでみればいいさ」
と、露伴先生は答えてくれた。
なるほど、そうすればいいのか……。今露伴先生が言った事は、夢の中では実際にやった事がある。
やった事があるのならば。夢の中か現実か、その舞台が変わるだけだ。……『だけ』ではなくない? 大分変わってる気が……。
いや、今はそんな事を気にしている場合ではないか。
とにかく、やってみよう。
椅子に座っている私は、ピンと背筋を伸ばし、深呼吸をした。
「──〈偽りの部屋〉!」
私がそう叫ぶと、身体の内側から〈何か〉が出てくるような感覚に襲われた。慣れない感覚に肩が跳ねる。
呼吸を整えてからきょろきょろと辺りを見回してみると、何と、私の左肩の辺りに人型の何かがいた。
そいつは透けたりせずしっかりとここに存在している。じっと私を見つめてきていた。