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異世界からこんにちは

第1章 異世界からこんにちは


ああ、言い訳なんて意味がなかった。
スタンド能力を使いましたって言えば良かったかなぁ。いやでも、それはそれで〈天国への扉〉を喰らっていた気がする。

露伴先生はスタンドを発動させ、私の指が本のようになった。もしかしたら指以外──例えば顔とか──も本になっているかもしれない。
風が吹き、軽く指のページが捲れた。

スタンドの能力を喰らったのなんて初めてだ。その衝撃からか、私は地面にへたりこんでしまった。

そんな私の元に露伴先生は近づいてくる。しゃがんで、私の顔を覗き込んできた。これはあれだな、顔も本になってるやつだな……。

「苗字名前、友人から呼ばれているあだ名はあだ名……」

「読まないで、読まないでぇ……」

自分が異世界から来た事がバレる事は勿論、個人情報が晒されている事に耐えられず、私は震える声で呟く。
一瞬だけ露伴先生は私と目を合わせてきたが、直ぐに本に視線を戻し、文章を読み始めてしまった。

「誕生日は一月一日、血液型はA型で……出身地は東京都か──ん?」

露伴先生は、そこで読み上げていたのを中断する。

「君、この世界の人間じゃあないのかい?」

「うっ……」

「君は異世界の出身なんだな!? これは……もう少し話を聞いてみるべきかもしれないな」

そう呟き、へたりこんでいた私の手を掴み立ち上がらせた露伴先生は、そのまま私の手を引っ張りどこかへ向かい始める。

「えっえっ、どこ行くんですか!?」

「僕の家だ。ゆっくり話そうじゃあないか」

歩きながら振り返った露伴先生の表情は、それはそれは楽しそうだった。
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