第1章 1章
「なにしてんの〜?」
俺はその子に近付くと声をかける。
「はい…!…わっ……えっと……」
その子は俺を見た瞬間…
…固まった。
「ねぇ大丈夫〜?」
「あっ…はい!大丈夫…です!」
見下ろしていたせいで若干首が痛いので今度はしゃがんで声をかける。
女の子の澄んだ瞳と視線があった。
「実は仕事に向かう途中で怪我をした猫ちゃんを見かけて…」
そう言って彼女は横たわった猫を撫でた。
後脚を怪我しているようでそこにはハンカチがあてがわれている。
「動物病院調べようとしたら携帯の充電が切れちゃってて…」
「ふ〜ん…じゃあ調べたげる〜」
そう言って俺は携帯を開く。
動物病院を調べると彼女に携帯の画面を見せてあげた。
「わぁ…!ありがとうございます…!!早速向かいますね!」
女の子は猫を抱えると立ち上がる。
「…ってお時間大丈夫ですか?服装的に学生さん…だよね?」
「あ。そうそう俺朝練あるんだった。忘れてたわ…」
…そういうそっちこそ学生では無いのか。
という台詞は飲み込んだ。
そして今度こそ彼女はありがとうございましたと手を振って病院の方へ走っていった。