第1章 1章
パタリと目の前の扉を閉める。
空を見上げれば、はっきりとしない雲が無限に広がっている。
なんとなく眠気が覚めなくて伸びをした。
まだ肌寒い空気が微睡んだ身に染みる気がする。
今日は部活の朝練があって室ちんと登校する約束になっている。
朝起きるのが苦手な自分の携帯には室ちんからのモーニングコールの履歴がずらりと並んでいた。
「おはよう、敦」
待ち合わせの場所に向かうと…
そこには既に氷室辰也───室ちんの姿があった。
「おはよ〜…ふぁ〜あ……」
「俺の顔を見てあくびしないでくれよ……
さ、行こうか。」
2人並んで学校への道を歩く。
ぼんやりと空を眺めながら歩いているとふと室ちんからそういえばと話しかけられる。
「たまたまテレビをつけたらおは朝がやってたんだけど…今日のてんびん座、運命が変わる出来事にあうって放送していたよ。」
「へぇ〜……」
運命…か。
正直、そんなことどうでもよかった。
バスケをしてる理由とか、そんなの覚えてもないし。
なんなら全てがつまらなかった。
ただ日常をお菓子のように消費して生きてくだけ。
たかが占いで左右されるような波乱万丈な人生など無いのだ。
「まぁたかが占いだから外れる事なんてしょっちゅうだろうけどね。」
室ちんはそう言って今日のラッキーアイテムだからとまいう棒を渡してきた。
…なんか緑ちんみたいだ。
早速開けて口に頬張る。
定番のいつもの味が口の中に広がった。
学校まで半分といったぐらいの所で頬にポツリ、と雫があたる。
どうやら今日は雨模様らしい。
「うげぇ〜…雨じゃん 聞いてねぇし…」
「ハイ、傘。折り畳み2本入ってたから貸す
よ。」
俺はありがとうと告げると傘を広げた。