第3章 3章
「ありがとう、もうここまでで大丈夫だよ。」
「ん〜…」
そう言うと紫原くんは私の手を離してくれる。
…というか、本当に私の家の前まで来てしまった。
「ちん、連絡先交換しよ。」
「えっ…?!」
「今日みたいな事があったら嫌でしょ。
何かあればすぐ俺に連絡してくれれば行けるし…」
なんというか有無を言わさずに紫原くんが携帯を出している。
…今日の紫原くんはかなり強引だ。
「えっと紫原くん…流石に連絡先はちょっと…」
「はぁ?やだし。…というか俺が心配になるからダメ。
さっきも言ったけど大人だからとか先生だからとか無しね。良いでしょ。」
そうして無理矢理な形で連絡先を交換する事になってしまった…
…ちょっとは王子らしいことさせてよね…
「えっ?」
「ん〜…何も〜?」
紫原くんが何かを呟いた様な気がしたけれど、気のせいだったみたい。
「んじゃ俺帰るから。ちんおやすみ〜
また明日ね。」
そうして私に背中を向けるとそそくさと歩いて帰っていってしまった。
「はぁ……」
『大丈夫?!』
『ちん泣かすとか最低…』
『どっち?もう観念してよね〜』
怯えて座り込んだ私の背に当てられた紫原くんの手、抱きしめられた感覚。
…何だかんだでこうして異性に優しく触れられたのって初めてかもしれない。
年下だけど、あんなに手が大きくて背中が広いんだなぁ……
あぁ、もう疲れた。
今日はもう色んな事が起こりすぎた…
早く寝てしまおう……
玄関の鍵を開けて部屋に入る。
疲れきった私はそのまま布団に倒れ込んでしまったのだった────