第3章 3章
「…ありがとう、もう大丈夫だよ。」
私はゆっくりと紫原くんから離れると涙でぐちゃぐちゃになった顔を拭った。
紫原くんは大人だから我慢しなくていいと言ってくれたけど…
やはり生徒を見守る者として甘えてばかりは居られない。
「助けてくれてありがとう。けど、よく私がここにいるって分かったね…?」
「ん? んー…丁度部活終わって駅前のコンビニ行こうとしたらちんが見えて声かけようとしたら連れてかれるの見かけて…
んで、ちん襲われてる所みたら凄いよくわかんない気持ちが湧いてきて…
ちん泣いてるし…
いてもたってもいられなかった。」
そう言って紫原くんは気まずそうに頭をかいていた。
「ちん泣かすとか最低…」
思い出すとイラつくと呟いて路地に転がっていた一斗缶を蹴飛ばす。
「ちん、家どこ?」
「ん?」
「また変なのに絡まれたら嫌でしょ。送ってく。」
そう言って私に手を差し出している。
…これは手を繋いで行こうという事なのだろうか。
「だ、大丈夫だよ。流石に家まで送って貰うのはやりすぎというか…」
「…いいから!」
「わっ……!」
グイと引っ張られて路地を出る。
「んで、どっち? もう観念してよね〜」
「ぅ……左…です……」
そうして私の手を引いたまま言われた方向に歩き出す。
傍から見れば迷子の子供を連れて帰っているような光景だろう…
もうどっちが子供なのか分からない。
…でも、
あの時 助けに来てくれた時の紫原くんは、
子供の頃に夢見た王子様のように…
かっこよくて見惚れてしまう程だった。