第3章 3章
「へへっ…それじゃあ───」
シャツに手をかけられ、あまりの恐怖に視界が滲む。
…もうダメだ。
そう思ったその時───
「痛ってぇ!!!!何だ?!」
私を掴んでいた男が急に頭を押さえてしゃがみ込んでいる。
足元に目をやるとそこには空になったまいう棒の箱が落ちていた。
「なに、やってんの」
普段の2倍3倍低い聞き覚えのある声が響く。
紫原くんがとてつもないオーラを放って立っていた。
「ヒッ…なんだコイツ…!」
「どけよ」
「は?」
「どけって言ってんの。日本語分かんねぇの?」
そうして紫原くんは私を捕まえていた男の頭を鷲掴みする。
「いてててててて!!!!」
「その人に二度近寄んな。捻り潰すよ。」
「う、うわぁぁぁ!」
「クソっ……覚えてろよ!!」
紫原くんに驚いた3人組は走って逃げていく。
彼は小さく舌打ちすると空になったまいう棒の箱を拾い上げ、こちらを見つめた。
「…大丈夫?怪我してない?」
ほんの少し焦りを秘めた紫原くんの瞳が私を見つめている。
「ぅ……」
足の力が抜けて私はその場にドサリと音を立てて座ってしまう。
「大丈夫?!」
すかさず紫原くんが近付いて私の背中に手を当てた。
「…立てる? 無理なら手を貸すけど」
「だい……じょうぶ…」
震える唇を動かしヘラヘラと笑って何とか立ち上がってみせる。
…大人なのだからこれくらいはしっかりしないと…
「…震えてる」
「え…」
私の手を優しく握った紫原くんが小さく呟いた。
温かな感触が冷えた私の手にゆっくりと伝わってくる。
「…今は大人だからとか先生だからとか、関係ないでしょ。
ちんは1人の女の人なんだから。」
そうしてそのままゆっくりと私の手をひいて…
気付けば私は紫原くんの腕の中に居た。
落ち着かせる様に優しく抱きしめられ、大丈夫だと囁かれ…
これまで恐怖に満ちていた心に安堵の気持ちが溢れていく。
私は流されるまま、紫原くんの背中にゆっくりと手を回した…