乙女ゲームの一生徒に転生した私は穏やかに暮らしたい
第2章 情報整理が夢でした
これが、これが……由比ヶ浜第一高校……!
背景で何度も見た景色が、今私の目の前に広がっている。
聖地巡礼でもしているような気分で、私は校舎を見上げていた。思わず拝みそうになったのは寸前で留まった。不審者過ぎるからね。
私のクラスは一年六組。何と、主人公と同じクラスだ。
下駄箱……うわー下駄箱だこれ……。
ここも背景で見た事がある。凄いな、本当にあるんだ下駄箱……。
感動のあまり頭が弱くなってしまった私は、ふんわりとした思考のまま自分のロッカーを探す。
あった。雪乃理沙と、私の名前が印刷されたシールが貼られている。
まだ自分のロッカーの位置がうろ覚えな私のような生徒にとっては有難い。
入学前にお母さんに買ってもらった南京錠に鍵を差し込む。
この南京錠、前世の小学校の教室の扉に使われていた鍵にそっくりなんだよなぁ。
しみじみと懐かしさを噛み締めながら、私は上靴に履き替えた。
このロッカーは真ん中の辺りに仕切りがあるため、靴入れとして使えるだけではなく、教科書を入れる事も出来る。
まあ私は何も入れていないから、このまま閉じて教室に向かおう。
私の隣のロッカーの人は、学校が始まってまだ数日しか経っていないのに、もう大量の教科書がロッカーに詰め込まれていた。たまたまそれを見た時にぎょっとしたのを覚えている。
多分置き勉派の人なんだろうな……。