乙女ゲームの一生徒に転生した私は穏やかに暮らしたい
第4章 仮入部期間は張り切るべき時
……いや、いくら何でも静かすぎない? 言わない方が良かったとか!?
「まあ私一年生ですけどっ、やれる事ならやるつもりなので、えっと……あの──ぶへっ!?」
必死に喋っていると突然さやか先輩に抱きつかれ、変な声が出てしまった。
「ありがとうー! 優しいねぇ理沙ちゃん!」
耳元で叫ばれて耳がキーンとなる中、もう私の名前を覚えたのか、なんて割と冷静な考えが頭をよぎる。
……まあ、さやか先輩がきっかけを作ってくれたお陰で、部室の空気は和やかなものになってくれたようで。部室からぽつりぽつりと、自分も手伝う、頑張ります、なんて声が聞こえてきて、私は皆同じ気持ちなんだと心があたたまった。
この日は発声練習などを先輩達と行い、五時に解散となった。
「雪乃くん」
帰ろうとドアノブに手をかけたところで話しかけられた。
振り返ると、そこには部長がいる。
部長は私を真っ直ぐに見つめ、
「手伝うと言ってくれて、頼もしかった。ありがとう」
と言った。
部長にお礼言われた!? しかも名指しで!
「え、……ありがとうございます?」
お礼を言われたのは私だというのに、何故か私もお礼をし返してしまった。こういうの言われ慣れてないから……。
「僕は……少し気負いすぎていたのかもしれないな。部員達と共に頑張るとするよ」
笑みを浮かべる部長は、どこか吹っ切れたように見えて、私は思わず見惚れてしまうのだった。
さぁ、新入生をドカッと入れられるのは仮入部期間だから、ここで頑張らないとね!