乙女ゲームの一生徒に転生した私は穏やかに暮らしたい
第4章 仮入部期間は張り切るべき時
……ん、さやか? ──ああ、道理で見た事がある気がした訳だ。
さやか──湊さやか。私の目の前にいるこの人は、おもこえで主人公を勧誘する、放送部三年生の女子生徒だ。立ち絵があり、出番も多い。
さらさらした綺麗な黒髪、いつもポニーテールの彼女は、後輩思いの良い先輩だ。
放送部に対する思いを話しているシーンがあるのだが、それに感動したのを覚えている。
「まあまあ、中入ってよ」
私の手の引き部室の中を進んでいくさやか先輩の表情はとても明るくて、見ているだけで私も嬉しくなった。取りあえず、歓迎されているっぽいから良かった……。
放送部の部室は、思っていたよりも広かった。縦に長い、と言うのだろうか。奥行きがある。
「新入生は君で一人目だよ! 来てくれると嬉しいねぇ」
にこにこと笑うさやか先輩は、本当に嬉しそうだ。彼女が放送部や後輩を大切に思っているのが伝わってくる。
おお、私が一番乗りなんだ。
まあ、真っ先にここに来たからなぁ。そりゃあ私が一番初めに到着するか。