乙女ゲームの一生徒に転生した私は穏やかに暮らしたい
第4章 仮入部期間は張り切るべき時
「お、それ」
ファイルを机の中にしまおうとした時、頭上から声が降り掛かってきた。
「仮入部の紙じゃん。もう書いてんのなー」
見上げてみると、私のファイルに視線を落としている森田二郎くんがいた。私のファイルは柄などのない透明な物のため、中身がよく見える。
私に話しかけてきた森田二郎くんは、例の私の隣のロッカーの子だ。
ロッカーに入っている教科書の量が物凄い彼。彼と登校のタイミングが被り、彼のロッカーを私が二度見した時に軽く話し、それ以来たまに会話をする仲になった。
私にとって、友達の一人である。
「うん、もう書いた。森田くんはどこの部に入りたいとかあるの?」
「あー、まだ決まってないんだよなぁ。色々見て回るつもり」
頭を掻きながら彼は答える。
「そうなんだ。私はもう早速今日から行くつもり! 楽しみだなぁ」
「一応聞いとくけどよ、分かってるんかー? 部室の場所」
「……あっ」
冗談だったのかケラケラと笑いながら言っていた彼は、私の『今気がつきました』みたいな顔を見て、
「えっ」
と、小さな声を漏らした。
……後で、部室の場所を調べておこう。