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乙女ゲームの一生徒に転生した私は穏やかに暮らしたい

第4章 仮入部期間は張り切るべき時


部活の仮入部期間は、新入生にとっても在校生にとっても一大イベントだ。

仮入部期間の初日。どこかそわそわとしていて落ち着きのない空気が流れている教室では、まだ朝だというのにどこの部活に行きたいだのという話がそこかしこで行われていた。

気が早いなぁと思うものの、私も教室の空気を落ち着きのないものにしている人間の一人だ。

私は少しでも気を紛らわせるために、ファイルから一枚の紙を取り出した。仮入部先の部活に渡す紙だ。
仮入部先を書く欄には、既に『放送部』と記入してある。勿論自分の名前も書いた。

私は、放送部に入るつもりだ。

おもこえの舞台は放送部のため、放送部に入部をしたら攻略対象達と関わる事になる。
しかし、私はただの一生徒。彼らに多大なる影響を与える事はないだろう。
主役ではないのだから、きっと『一年生の放送部員C』くらいの立ち位置に落ち着くはずだ。

……それに、放送部に入りたいという願いは、前世の記憶を取り戻す前の『私』が考えていた事でもある。『私』は中学では放送部に入っており、高校でも放送部員として過ごしたがっていた。
私は、『私』の思いを尊重したい。

ちなみに、前世の私も放送部に所属していた。おもこえに手を出したのも、自分に馴染みのある放送部が舞台だったからだし。

と、まぁ、色々理由を述べてみたが……。

放送部に入りたい。結局はこの一言で私の気持ちは説明出来る。

ああ、早く放課後になってほしい。

気持ちを紛らわすための行動で、かえって落ち着かなくなってしまった。

苦笑いを浮かべ、私は紙をファイルに戻した。
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