第20章 約束
先輩が去った後、しばらく忍具の手入れを続けた。
没頭するとあっという間に時間が過ぎ、窓から見える空はいつの間にか夕焼けで染まっていた。
帰宅する際、特に食材は買ってこなかった。
軽く空腹を覚え、僕は立ち上がった。台所で何かないかと探したが、長期の任務を想定していたため、自宅に買い置きはなかった。
体はまだ気怠く、動くのは億劫だった。しかし、空腹には勝てず、僕は重い腰を上げて木ノ葉茶通りへと向かった。
*
夕暮れの木ノ葉茶通りは賑わっていた。人の波をすり抜けて、先を進む。軽く済ませようと、店を物色していたら見知った人とまたばったりと会った。
「……」
「よく会うな」
「それはこちらの台詞です。何してるんですか、先輩」
目立つから離れていたいと思っていた矢先、またカカシ先輩と遭遇するとは。
「昼間の話は確認したよ。お疲れさん」
「いえ…。大事にならずほっとしました」
じゃあ、と立ち去ろうとすると、珍しく先輩の方が僕を引き留めた。
「折角だから、飯でもどう?そこの蕎麦屋、結構旨いよ」
先輩が片手の親指で指し示した先には、老舗と思われる蕎麦屋があった。鰹だしだろうか、いい匂いが店先から漂っている。
「蕎麦ですか…いいですね」
幾分穏やかな雰囲気に気持ちは緩み、促されるままに蕎麦屋へと足を踏み入れた。
まさかその後、彼のその目立つ容姿に感謝する事態が起こるなんて、夢にも思わなかった。