第20章 約束
「先輩。窓から来るの、止めてくれませんか?」
「え?皆そうしてるんじゃないの?」
「何言ってるんですか、まったく。先輩だけですよ、昼日中窓から入ってくる人。…僕としては、極力目立ちたくないんですけど」
溜息交じりにそう言うと、彼は軽く目を開いて不思議そうな顔をした。彼にとってはごく当たり前の行動らしい。
「ところで、どうしたんです?急に」
僕は持っていた手裏剣を、座卓の上に置いた。
「いや何、昨日だったか…暗部数名が慌ただしく里を出たのを見かけたんだよ。ちょっと気になってな」
昨日と言うと、火の国の大名の件かと考える。三代目に聞いた、警護強化に向かった忍たちだろう。
「ああ。先輩の懸念は、多分当たっています。三代目の命で、火の国の大名の警護に向かった者たちでしょうね」
そのことを話すと、先輩は壁に預けた背を起こした。眉がピクリと動く。
「何だと?まさか、まだ暗殺計画が続いてたのか?」
「ええ。側近が企てたようです。ですが、ご無事です。詳細は三代目からお聞きになった方がいいんじゃないですか?これ以上僕からは…」
「そうだな。…悪かった。俺はもう部外者だったな」
軽く笑いながら、彼はまた壁に背を預けた。
「気にかけて下さったのはありがたいんですけど、すみません」
お茶でも入れましょうかと立ち上がると、カカシ先輩は眠たげな目でこちらを見た。
「いや、いいよ。それだけ気になってな」
「そうですか」
「ま、細かいことは三代目に聞くよ。ちょうど今日の任務の報告書を提出するからさ。邪魔したな」
片手を軽く上げてから、カカシ先輩は窓から出て行った。窓は開いたままだ。
「だから、止めてくれって言ってるのに…」
先輩は聞いているようで、あまり僕の話を聞いていない。呟きと共に、軽く溜息が漏れた。