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明日晴れたら

第20章 約束



頭に湯を勢いよくかけると、狂ったように笑う男の顔が目に浮かんだ。

彼はどこで僕の名前を知ったのだろうか。闇に紛れて任務をこなしても、身に宿る細胞についての知名度は消えることはなかった。


「忍の神」とは、この木ノ葉隠れの里の初代火影。

その細胞を、僕はこの身に宿している。
別に子孫でも何でもない。ある人物の酔狂な実験で、僕は彼の唯一無二の力を手に入れた。
幼い頃のことだ。だから、両親の顔も知らない。


実験によって偶然手にした能力は、生きた樹木を生み出すもので、初代様と規模は違えど、森一つを作り出す事が出来る希少なものだ。

それを疑いもせず受け入れるほど、僕はお目出たい人間ではない。使う程に肩に重くのしかかってくる。

こうして、里の、国の危機を食い止めることに役立てたとき、ほんの少し楽になるだけだ。


──木遁のテンゾウ。

暗部で任務をこなしていく内に、いつの間にかそんな通り名が僕にもついた。


*


入浴後、僕は汚れた服を洗濯機に放り込み、動きやすい服に着替えた。濡れた髪をタオルで拭い、忍具を置いた居間に戻る。

座卓の傍に腰を下ろし、ホルスターやポーチに入っていた手裏剣やクナイを取り出した。表裏返しながら、刃こぼれを確認する。布で汚れを拭き取り、刃を軽く研いだ。

こん。

不意に窓辺でした音に顔を上げる。
こもった空気を入れ換えるため、窓を半分ほど開けていた。

僕は、里の中心地から少し離れた集合住宅に住んでいる。現在は三階で、掃き出し窓の先にはベランダがあった。


振り向くと、よく知る人がそこに立っていた。

「カカシ先輩…」
「よ、任務は無事終えたようだな」


カカシ先輩は、時々こうして自宅を訪ねてくる。多分他の班員の家もこうして訪ねるのだろう。窓辺に降り立ち、窓をこんと軽く叩く仕草は慣れたものだ。

するりと窓から体を滑り込ませ、窓の脇の壁に背を預けている。


僕としては、玄関から入ってきてほしいと思っていた。何故かと言うと、彼はこの里ではよく知られている人物で、しかも特徴的な彼の髪は良く目立つ。

所属部隊の関係上、意識的に目立たぬように過ごしているのに、彼の来訪で下手に注目を集めるのは避けたかった。

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