第20章 約束
自宅へ戻り、僕はベッドに体を横たえた。
今日の出来事を振り返る。
(明日晴れたら、か)
日常の天候なんて、任務の成功率に左右する程度の意識しかなかった。まして休日に至っては、曇りでも雨でもさして気にしてはいない。
真夏や真冬などの厳しい天候こそ、鍛錬に最適とも言え、鈍(なま)った体に活を入れる場合は、悪天候の方がよいように思うくらいだ。
それを。
まるで待ち望むかのごとく、彼女は嬉々とした様子で話していた。
むず痒いような感情が胸を支配する。
いつもならその温い感覚をどこか冷めた目で見ていた気がするのだが、不思議と嫌な感じはしない。むしろ期待感すら生まれていた。
夕食は既に済ませている。
仰向けに寝転んだまま、片腕で視界を遮る。夜に包まれた里の気配を感じながら、僕は静かに眠りについた。
*
その約束をしたのは、今から数時間前の夕刻のこと。
雨隠れの里での任務を終え、僕はそれぞれ散らばった班員からの情報をまとめていた。
三代目に報告書を提出した頃には、既に昼を過ぎ、折角の休暇は半日潰れた。三代目からの恩賞は二日の休暇だったが、既にもう残りは一日と半分。
いつものことだと諦め、自宅へ戻った。
半日は体を休めて忍具の手入れを。残りの一日は鍛錬と、時間に余裕があれば散歩でもしようかと考えていた。
随分と色気のない休日だ。
もし恋人でも居たら、彼女の希望に合わせて予定を組んだりと、心も浮き立つのだろうが、残念ながら僕にはそんな相手はいない。
そんなことを取り留めもなく考えながら、数刻ほど経ってから浴室で汗を流す。もちろん残る血の臭いも。