第4章 内緒ごと

ナルト君との間にあった、小さな出来事。

「秘密」というには大袈裟な、ほんのひと時のやりとりを、彼は覚えていた。

*

それは、アカデミーの男子生徒と、くノ一クラスの女生徒との共同授業の後の話だ。


その日は手裏剣術の授業で、演習場の丸太に向かって、生徒たちが順番に的へと手裏剣を投げていく実技訓練だった。得意な子と苦手な子と様々いたが、皆周りの様子を見つつ懸命に課題に取り組んでいた。
　
抜きんでていたのは、男子ではうちはサスケ。くノ一クラスでは山中いの。

的に当たらない子たちには、私たちが投げる角度や距離、必要な筋力等の説明をし、お手本を見せる。

ナルト君はというと、意気込みは見事なものの的にはたまにしか当たらず、ちょっと機嫌を損ねていた。隣では、サスケ君が女生徒に囲まれており、邪魔をするなと言わんばかりに、素っ気ない態度で接していた。


授業が終了した後も、サスケ君に話かける女生徒は後を絶たず、彼を中心に大きな輪が出来ていた。きゃあきゃあと黄色い歓声が飛んでいる。

私は散らばった忍具の片付けながら、その様子を遠目で眺めていた。やっぱりあれくらいの年頃だと、サスケ君みたいに優秀で、顔立ちもよくて、クールな雰囲気の子がモテるのかな、なんてぼんやりと思いながら。


ふと前を見ると、私のほんの数歩先にナルト君がいて、数多くの忍具を拾っていた。彼はぶつぶつ不満を零しては、サスケ君と彼に憧れる女生徒の一団をチラリと見ていた。その一団は片付けを終え、賑やかに演習場を去って行くところだった。

「ちぇっ！ちぇっ！……俺だって、めっちゃくちゃ修行したのに」

ナルト君が悔しさを滲ませて呟いた。

予備で出した忍具を両手で持ったまま、私はナルト君に目をやった。少し離れていたから、こちらには気づいていない。彼の額からは汗が滴り落ちていた。下を向いて、ぐっと拳を握りしめている。