第3章 陽の当たる場所
「え?ナズナ先生、ナルトと何かあったんですか?」
「実は……」
ことの詳細を話そうとすると、それをナルト君が遮った。私とイルカ先生の間に素早く割り込み、話を断ち切るかのごとく片手を出す。
「駄目だってばよ!これは、俺とナズナ先生の間の秘密だからな。イルカ先生にも内緒!」
悪戯っぽく笑う彼が、戸惑っているイルカ先生を見てから、私の方に顔を向けた。
「な!ナズナ先生!」
その表情が何とも可笑しくて、思わず頷いてしまった。
「うーん。そうだね。今は秘密かな」
「こら、ナルト。そんなこと言うと、ラーメンおごってやらないぞ」
ちょっとムッとした表情でイルカ先生がナルト君を睨むと、ちょっとだけ彼はひるんでいた。
「そ、それとこれとは別だってばよ。それより、イルカ先生、腹減ったから早く行こうぜぇ」
「全く、現金な奴だなぁ。しょうがない。今度また教えてもらうからな」
イルカ先生は腕を組んでナルト君を見下ろしている。けれど、すぐに笑顔に戻り、彼の頭をワシワシと撫でた。
「じゃあ、行くぞ~」
「やったぁ。ラーメン~」
嬉しそうに笑い合う二人を見て、私も笑う。
「じゃあ、私はこれで。ナルト君、またね」
「じゃあな。ナズナ先生!」
ナルト君が満面の笑みで私に手を振っている。イルカ先生は照れくさそうに会釈してから背を向けた。
背の高いイルカ先生は、ナルト君を追い越したり、振り返って促したりしながら進んで行く。その隣をナルト君が小走りについていく。手を繋ごうとしているかのように、差し出された右手がイルカ先生の左手近くにあった。
傾いた日差しが二人を包み込んでいる。彼らは、本当に年の離れた兄弟のように見えた。