第4章 内緒ごと
かける言葉がすぐに浮かばず、私は彼を横目で見ながら忍具を拾い続けた。すると、他の生徒に助言をしていたイルカ先生がこちらに来た。
「おう!ナルト、お前もよく頑張ってたな」
朗らかに笑って、イルカ先生は話しかけた。
けれどその励ましは、悔しがってる彼には届かなくて、ナルト君は俯いたまま小さな声で答えた。
「…全然だってばよ。俺の手裏剣もクナイも、ほとんど的から外れてた」
「そんなことないぞ。前なんか、的に刺さりもしなかったじゃないか」
とても優しい言葉だと思った。
でも。
「何言ってんだよ!イルカ先生!……サスケは、サスケは、ほとんど的の中心に当ててたのに!」
ナルト君は両拳を握り、必死な様子で訴えては下を向いた。唇をぎりと噛みしめている。イルカ先生は驚いていた。
「あのなぁ、ナルト……」
顔を覗き込むように、背を丸めたイルカ先生を遮って、ナルト君は駆けだした。
「もういいよ!」
集めた忍具を地面に置いて、ナルト君は背を向けて走って行った。その様子を目を細めて見つめる。少しだけ、彼の気持ちが分かる気がしたのだ。
隣では、イルカ先生が溜息を零していたのだけれど。
*
その後ナルト君は、アカデミーに戻ったらしい。これから教える予定の忍術の巻物をこっそりと持ち出したことがばれて、管理担当の教員に叱られていた。アカデミーで使用する教材の一部ではあるものの、無断で持ち出したのだ。当然説教されるに決まっている。
ところが彼は、巻物を取り上げられるとすぐ、睨みを利かせているその教員の目の前で変化の術を使った。
「おいろけの術!」
白い煙が掻き消えると、何と裸の若い女性が現れた。金色の長い髪を二つに結っている、青い瞳の可愛らしい女の子。豊かな胸にくびれたウエスト、形の良いお尻にスラリと長い脚、と非の打ちどころのない姿だ。
その女性が、色っぽく、投げキッスを贈ってその男性教員を誘惑しているのだ。腕を組んで𠮟りつけていたのに、それを見た瞬間、彼は鼻血を噴き出して呆気なく倒れてしまった。
ナルト君はそれを見ると、解放されたとばかりに術を解いて、ニヤリと笑って走り出した。