第19章 再び
「ああ!」
思わず声が漏れる。
隣にいる男性も、振り向きざま驚いた顔をしていた。
「ん?何?二人とも知り合いだった?」
カカシさんが私たちの驚きように、視線を彷徨わせる。
「知り合いというか…」
私が彼を上目遣いに見つめて言い淀んでいると、カカシさんが何事か感づいて両手を打った。
「あ!ああ。そういうこと?」
何が分かったのか、こちらにはさっぱり見当もつかない。カカシさんは一人訳知り顔で頷き、隣にいるあの人の肩を叩いた。
「テンゾウ。じゃ、俺はこれで。お前、確か明日休みだったよね」
「え?いや、それはそうですけど…。ちょっと、先輩?」
「ナズナさん、またね。こいつを置いていきますので、後よろしく」
「え?あのう。は、はぁ…」
カカシさんはこちらを向いて、可笑しそうに眼を細めた。そうして、煙と共に姿を消した。
*
薄暗闇の中、彼と二人商店街の通りに取り残される。
食事時を迎え、周囲の人通りは多くなってきた。とりあえず道の端に寄って、彼を見上げる。
「あ、あのう。貴方はカカシさんの知り合いなんですか?」
その問いに、彼は気まずそうに首の後ろに手をやった。
「ええ。…そうですね。彼はアカデミーの先輩に当たりまして。それに、任務が重なることも多かったんで割と親しい間柄なんです」
訥々と彼が言葉を繋げる。少し迷い迷い話している様子が窺えた。もしかして、聞いてはいけないことだったろうかと、私はその後口をつぐんだ。
「貴女は?」
見上げると、彼は真っ直ぐに私の顔を見ている。それに少し頬が熱くなり、俯いて答えた。
「私は、アカデミーの教え子が、ちょうど今回あのカカシさんの班に配属になりまして…この間ご挨拶を」
「なるほど、そうでしたか。驚きましたよ。まさか、こんなところで会うなんて」
彼は照れくさそうに笑っている。
不思議とその様子に、以前感じた壁のようなものはなかった。けれど、私が質問をすることで、また彼との間に壁が出来るのではと臆病になり、それ以上何も言えなかった。