第15章 くすぶる思い
母は医療班に所属していて、呼び出しがあれば任務先へと向かう。家に居る時間はマチマチだった。
亡くなった父は、口寄せを得意とする忍で主に戦闘や災害時の救助など、後方支援で活躍していたと記憶している。
父の口寄せ獣は、黒々とした毛をした巨大な熊だった。その巨体を生かして、何人もの人を担ぎ疾走する。前脚で敵となるものを軽々となぎ払い、戦場を駆け回ったと言う話だ。
私は両親から、医療と口寄せの知識を教えてもらったけれど、使いこなすまでには至らなかった。
母のように繊細なチャクラコントロールは出来なかったし、父のように巨大な獣を長時間口寄せするチャクラ量もなかった。
チャクラ量はいずれ増えると、訓練はしたものの未だ鳴かず飛ばず。そのため、子どもが好きだったことから、教師を目指した。
今は、子供たちと尊敬出来る教師仲間と過ごす日常に満足している。
*
南瓜を切って、ホウレン草を茹でる。煮物とおひたしを作り、台所の机に置いておく。まだ暑い時期ではないから、半日くらいは常温でも大丈夫だろう。
私は入浴を済ませ、自分の寝室に向かった。
ベッドに横になり、に昔のことに思いを巡らせた。父と母に修行をつけてもらっていた時のこと。
(私、これでいいのかな)
子供たちに忍術や忍の心得を教える。
成長を見守る。
どれも大切なことで、やりがいがある。
そして、何より楽しい。
それでも、母の背中を父の面影を追う内に、私も両親のように、人助けが出来ないだろうかと考えるようになっていた。
それは、小さな小さな思いだったけれど、いつの間にか自分の胸の中に芽吹いていた。