第15章 くすぶる思い
翌日アカデミーでの担当の授業は、午前中で終わった。
午後は次回の準備を進めようと考えていたところ、任務受付の補佐を頼まれた。
受付場所に着くと、受付中央に火影様がゆったりと腰掛けていた。
「火影様、今日はよろしくお願いします」
挨拶をすると、彼は火影の笠を片手でひょいと上げて微笑んだ。
「おお。今日手伝ってくれるのはナズナ先生だったかの。久しぶりじゃな」
「はい。あの、慣れないものでご迷惑をお掛けするかもしれませんが…」
恐縮してそう言うと、火影様は笑った。
「そう畏(かしこ)まらずともよい。ほれ、そこに居るイルカが進め方はよく心得ておる。よろしく頼むぞ」
「はい」
私は火影様に一礼して、彼の一つ横に座るイルカ先生にも会釈をする。
「ナズナ先生、すみませんね。受付担当が一人、緊急の呼び出しで抜けてしまいまして」
朗らかに笑うイルカ先生を見て、私は昨日の出来事を不意に思い出した。何とも情けないことの顚末(てんまつ)。
(後で言っておかないと…)
気まずい気持ちを抱えたまま、私はイルカ先生の隣の席に腰掛けた。目の前の机には、これから渡す予定の任務の資料が山積みになっている。
「イルカ先生がいてくれて心強いです。よろしくお願いします」
にっこりと笑顔を作り、イルカ先生に挨拶する。それから、彼から仕事内容の説明を一通り受け、訪れる人々を静かに待った。
その日任務受付には、上忍、中忍、下忍と様々な人たちが訪れた。ツーマンセル、フォーマンセルと組まれた班も任務内容によって、細かく変わるようだ。
資料を揃えて渡したり、火影様が受け取った報告書を指定の箱に仕分けしたりする。
顔見知りの人には、軽く目で挨拶して次々と進めていくと、山積みになっていた依頼書はいつの間にか片付いていた。