第37章 悲しみにくれて
それから数時間後。火影様が亡くなった。
弟子であり部下でもあった伝説の三忍、大蛇丸からこの里を守って。
*
翌日、木ノ葉隠れの里は雨模様だった。
静かな雨音を聞きながら喪服に着替えて、私は一人自宅を出た。肩口で切りそろえた髪が心もとなく揺れる。玄関口から空を見上げると、まるで空が泣いているかのように、落ちる雫が里全体を包み込んでいた。
火影岩の前に、三代目の遺影を飾った葬儀の場が設けられた。戸締まりをして、その会場へと向かう。
道々に黒い服に身を包んだ人々が、皆うなだれてゆらゆらと歩いて行くのが見えた。どこからかすすり泣きが聞こえ、私の目も知らぬ間に潤んでくる。
しばらく歩き会場につくと、私は列の中程に並んだ。
最前列にナルト君やイルカ先生の姿が見える。火影様のお孫さんである、木ノ葉丸君もいる。泣いているのかその小さな背中は震えていた。
前列の人から順に、一人ずつ別れを告げていく。
私が列へと戻る途中、ナルト君やサクラちゃんと目が合った。一度視線が交わったあと、悲しげに目を伏せる。他の知っている人たちも皆そうだった。
誰もが多く言葉を発さず、式は厳かに進んだ。
小雨はずっと降り続いている。
私は遠くにある遺影を見つめ、火影様のことを思った。
アカデミーに通学していた頃や、教師に成り立ての頃のこと。任務受付で一緒に報告を聞いていた日のことが、昨日のことのように思い出される。
キセルをくわえて満足そうに煙を吐き出す表情をよく見た。幼い頃には、視線を合わせて頭を撫でてくれたこともある。深いしわが刻まれた顔は、いつも穏やかに微笑んでいて……。
きっと、同じような記憶を持つ人がこの場所にはたくさんいる。火影様の存在は、この里にとってとても大きなものだ。
今はまるで、灯が消えたように里が静まりかえっている。
(火影様……)
空を見上げると、溜まっていた涙が頬を滑り落ちた。