第35章 戦闘
不意に、印を結んでいた忍の方から、風の刃が飛んでくる。それを間一髪で除けた。刃は髪に当たり、バサリと一房が切れる。
(風遁…?)
膝をつき前を見ると、別の忍がこちらに襲いかかってきた。
私はポーチから手裏剣を取り出して投げつけた。ホルスターからはクナイを。それを影分身で増やす。彼らは器用にそれらを弾き飛ばし近付いてくる。咄嗟に相手に煙玉を投げた。周辺が白い煙に包まれる。
隣では、男性教師がクナイを手に応戦していた。お互いの武器が打ち合わされて、高い金属音が響いている。
「こんな手が通用するか!」
また一人が風を起こした。強風で一面白くなった視界がまたはっきりとしてくる。
私はもう一度同じ手を使い、今度は煙が充満している間に術を仕掛けた。油断して近付いてきた二人に幻術が効いた。がくりと崩れ落ち、気を失った。
(よし!これなら少し時間稼ぎが…)
火影岩へと走る集団を目で追う。
ここから大分距離が開き始めている。
(あれ?)
けれど、住人たちに紛れて転んだり、尻餅をついて立ち上がれずにいる人がいた。
(あの速度じゃ追いつかれちゃう!)
男性教師は暗器を使ったり、忍術で二人を食い止めている。だが後の二人が物凄い勢いで、こちらに迫ってきていた。
「馬鹿なやつだな。しゃしゃり出て来て、もう技がないか!」
忍び刀を大きく振りかぶって、一人が襲いかかってきた。
「そんなわけ、ないでしょ!」
キッと相手を睨み付けて、術を施した。
「印の結びが遅い!」
もう一人も迫り来る。
「封印術・一糸灯陣(いっしとうじん)!」
術名を唱えると、地面に術式が刻まれた円陣が光る。その円内に入り込んだ二人の体は、ピタリと動きを止めた。
「くそ!封印術か!」
そうして、何とか二人の前進を止めた。また前方に目をやると、転んだ人たちはヨロヨロと立ち上がり、逃げ始めていた。
(何とか足止めになれば…)