第35章 戦闘
皆を追い立てながら、最後尾にいると、最後の生徒たちの一団が小走りで追いかけてきた。男性教師が二人、脇に付き添っている。
「火影岩の方へ急ぐぞ!」
「はぁい」
生徒たちの一団に交じり、里の住人たちも同じ方向へと走っていく。お年寄りや赤ん坊を連れた女性。左右に気を配りつつ、足早に進む。
(あれは…)
再度後ろを振り返ると、数人の人影が近付いてくる。
跳躍しながら、屋根伝いに来るのは木ノ葉隠れの忍ではなかった。
「敵襲だ!皆急げ!」
一人の男性教師が叫んだ。生徒たちの顔が恐怖で青ざめる。それをなだめつつ先を急がせた。
追っ手はぐんぐん迫ってくる。
私は同僚の女性教師に生徒たちを任せて、後ろの一人の男性教師と示し合わせて、追っ手に向かって走った。
「ナズナ先生!どこへ行くの?」
彼女の叫ぶ声に、振り返って答える。
「少しでも足止めを!先生、先に行って下さい!」
駆ける足に力を込める。追っ手の目的が何か、まずは見極めなくては。そう思ったら足は動いていた。
「行きましょう!」
「おう!」
実技指導の男性教師が隣を走りながら、力強く答えた。
*
人影は木ノ葉とは違う忍び装束を纏っている。頭部の額宛には砂の印があった。
二人とはいえ、先に行く集団を分断するように通りに立ち塞がると、三人が立ち止まった。その後ろから二人来る。
クナイを構え、攻撃に備える。隣の男性教師が身構えたまま叫んだ。
「お前たち、何が狙いだ!」
三人は顔を見合わせて、にやりと笑う。
「これは木ノ葉と砂の戦争。木ノ葉の忍は皆敵だ」
「お前らは、まだ満足に戦えない者も狙うのか!」
私たちの前を走るのは、一部を除いてまだ大人相手には手も足も出ない人ばかりだ。
「甘いな。いずれ仇となる者だろう。ならば今ここで潰す」
「馬鹿な」
薄く笑いながら、彼らは身構えた。中の一人が印を結ぶ。話し合いが出来る状況ではなかった。
「敢えて追って来たみたい」
「ああ。何とか時間稼ぎを……」
私たちは近付いて頷き合った。
もう戦うしかこの場を凌ぐ方法はないようだ。