第34章 混乱
窓の外を見据えると、中忍試験会場の方角に土煙が上がっている。何か大きな影が見えた。突然背筋がぞっとして、身震いをする。
(会場の方?一体何が…)
バタバタと廊下を走り抜ける音を聞いて、私は教室内に戻った。不安げな顔をしている生徒たちに先ほどのことを伝える。
「皆、落ち着いて聞いてね。今大きな音がしたと思うけど、里に危険なものたちが入ってきたの。アカデミー内もこのままだと危ないかもしれない。だから、避難場所へ移動します」
女の子たちはざわざわと話し出し、身を寄せ合った。それでも私の言葉に頷いてすぐに席を立つ。
「私の後に着いてきてね。火影岩の近くの避難所へ」
教壇に置いてあったポーチと巻物を掴んで、私は戸口へと向かった。
*
建物から外へ出ると、アカデミーの生徒たちがそれぞれの教室毎に固まって校庭を小走りに進んでいく。前の一団に、イルカ先生の後ろ姿がある。度々振り返りながら、生徒たちを先導していた。
私もその後に続く。後ろを振り返ると、皆緊張した表情で足を速めている。一人震えている子の手を引いて、私は全員に声を掛けた。
「大丈夫。まだこの辺りは安全よ」
揺れる瞳を見つめ返し、私はどんと胸を叩いた。
「先生だって、戦えるのよ。絶対に皆を守って見せるから」
力強くそう言って見せると、皆が笑う。先生そんなに強くないじゃない、そんな声も聞こえてがっくりと肩を落とす。
「こら、そこ聞こえてるよ。私は、まだ皆の前で真の実力は見せてないんだからね」
冗談ぽく言って私が前を向くと、後ろでクスクスと笑う声が聞こえた。少し緊張が緩み、進む足音は早くなる。私たちは、イルカ先生の団体を追いながら前に進んだ。
「ナズナ先生!」
避難連絡が終わったのか、同僚の女性教師が走り寄ってきた。
「ありがとうございました。もう、教室に生徒は?」
「先ほど、他の先生が最後の生徒を外に。急ぎましょう!」
「はい」