第34章 混乱
地響きは定期的に続いており、通りの地面も微かに揺れる。右左に目を向けると、遠くに新たな土煙が上がっていた。
(胸騒ぎがする…)
(あの、九尾事件のときのような…)
生徒の小さな手をぎゅっと握りしめる。過去の記憶が蘇り、鼓動は突然高鳴り出す。
(あのときみたいに、何も出来なかったら…私…)
「先生?」
女生徒が私を心配そうに見上げていた。その顔を見て、我に返る。
「ごめんごめん。ちょっと考え事をね。行こう!もうすぐよ」
道を進む中、走りながら避難所に向かう住人とも行き会う。火影岩に近づくにつれ、その人数は増えていく。
建物の上を見上げると、忍たちが屋根伝いに走っていく。建物間を縫って、伝言なのか何人かが大きく声を上げた。彼らが指差す方向に、忍装束の数人が飛ぶように駆けていく。私はその背を目で追った。
視線の先には、本選の会場がある。その高い建物の屋根が何かに囲われていた。薄く色づいたガラスのような枠が見える。
(あれは…結界?)
あんなに大きな結界は初めて見る。建物を覆うような巨大な結界だ。
屋根を進む忍の中には、マントを纏った人が交っている。フードで頭部が見えないと思っていたら、その人が振り返った。その顔には白い仮面がある。
(暗部?)
またひやりと何かが胸をよぎる。
暗部がいる。
暗部が動くときは、里の大事の時。
(一体何が起こってるの?)
はやる気持ちを押さえつつ、私は立ち止まった。後ろの続く生徒たちを前に促す。握っていた手を離し、もう一人の女性教師に先導を頼み、私は生徒たちの最後についた。