第31章 途絶えた知らせ
テンゾウさんに着いて行き、三階の部屋に上がる。
「どうぞ」
「…お邪魔します」
部屋はすっきりと片付いている。
座卓に座布団。窓際には書き物をするためか、机と椅子。大きめの掃き出し窓と、その奥にベランダがあった。
「そこに座っててくれるかな?僕はお茶を入れてくるよ」
テンゾウさんはもう一枚座布団を用意して、ポンと叩いた。
「すみません、お構いなく」
私がそわそわしながら座布団に腰を下ろすと、彼は台所らしき方へと消えていった。
(どうしよう…緊張する)
思いがけず彼の住まいに上がり込むことになり、落ち着かない。何度も座り直しては、視線を彷徨わせる。室内は本当にシンプルで、必要最低限のものしか置いていないように見えた。
「もしかして、物が少なくて驚いてるとか?」
キョロキョロと見回していると、手にカップを二つ持ってテンゾウさんが戻ってきた。苦笑いをしながら、カップを座卓に置く。
「ええ。本当にすっきりしてますね」
「まあ、寝に帰るだけってことが多いから」
彼はふっと笑い、腰を下ろした。カップを手に取り一口お茶を飲む。その姿を見届けて、私も両手でカップを持った。
(温かい…)
室内はやけに静かだった。屋外の音も特に聞こえない。
私はゆっくりとお茶を飲んだ。テンゾウさんも特に口を開かずお茶をすすっており、沈黙が続いた。