第31章 途絶えた知らせ
ヒナタちゃんの怪我は、それは酷くて、運び込まれた当初は命の危険もあったらしい。
話を聞いてすぐ、お見舞いにきたときは、眠り込んだままで話も出来なかった。青白い肌色をして横たわる彼女を見て、胸が痛んだ。
「あの、先生…」
「なあに?」
「何度も来てくれたって、病院の人に聞いて…。その、ありがとうございました」
ヒナタちゃんがぺこりと頭を下げる。
「そんなこと!紅さんも、班の皆も来てたじゃない」
「妹さんも…」
そう言ったとき、病室の扉が静かに開いた。
「姉さん」
振り向くと、小さな女の子が一人。
妹のハナビちゃんだった。私に気が付いて、恥ずかしそうに頭を下げる。
「ハナビ…」
ヒナタちゃんが顔を覗かせると、彼女は小走りで近づいてきた。
「早く帰ろう?」
「うん」
強く手を引くハナビちゃんに、少し困ったような顔でヒナタちゃんが微笑む。
「ふふ。お迎えがあれば、安心だね」
「……はい。あの、先生。私、もう行かないと…」
「いいの。ちょっと様子を見に来ただけだから。気をつけて帰ってね」
私は、お見舞いのつもりで切り花を手にしていた。
「あ、そうだ。日向さん、これ良かったら貰ってくれる?」
白い百合の花を彼女に差し出す。すると、ヒナタちゃんははにかみながら、おずおずと手を伸ばした。
「ありがとうごさいます……ナズナ先生」
ヒナタちゃんは、グイグイと手を引かれて病室を出て行く。私は、彼女たちを手を振りながら見送った。
(元気そうで良かった)
姉妹仲良く手を繋ぐ後ろ姿を、通路に出てしばらく見ていた。
そうして、私は木ノ葉病院を後にした。