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明日晴れたら

第30章 大樹の根のように



(次は…)

日程を確認して、手紙を書こうとした。
すると、忍具の入ったホルスターに腕が当たってしまった。

机の上から忍具が一つ零れ落ちる。床で重く鈍い音を立てたのは、クナイだった。

そのクナイには、赤黒い何かがまだこびり付いている。のろのろと拾い、近くにあった手拭いで、その汚れを拭き取った。

(ああ…)

それは、今日早急にと言い渡された任務の名残りだった。

一人の「根」出身者の暗殺。
それが、僕に下された任務だった。


*


中忍選抜試験が近づくにつれ、不穏な空気が漂ってきていた。同盟国である砂隠れの里のスパイがいるとか、木ノ葉隠れの里の手練れであった抜け忍が、またこの里に近づいているという話。

そうした情報が飛び交う中、かつて暗部の別働隊だった「根」の者が他里と通じ、この里を内部から混乱に陥れようと動いていると聞いた。何人かいる内の「根」出身の者で、個人が特定できた一人を僕は討ったのだ。


「根」とは、今は解体された暗部要請部門である。

現在暗部は、出自、ランク、性差、年齢と関係なく、火影の任命の元に選抜されている。しかし十年以上前には、この里に奉仕する忍の中の忍を育成する目的で、そう言った機関があった。

まとめていたのは、三代目の同期であるダンゾウという者だ。

彼は、里を大樹に例え、根のように支える者が真の忍であるという強い思想を持っていた。人として当然ある、個性や感情の一切を排除して、里のために尽くすことが最善と考えている人物だ。

育成されるのは、情報を漏らさず機械のように任務を粛々(しゅくしゅく)とこなす者。


僕もまた、一時期その組織に身を置いていた。木遁秘術に興味のあった彼は、僕の忍術が生きるような任務を与えてくれたのだ。

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