第5章 記録
この記録ノートについて、改めて考えるような出来事があった。
火の国の大名に対する、小規模なクーデターが起こり、僕はその集団を殲滅(せんめつ)する任務に出ていた。その任務を無事終えた、帰り際のことだった。
あと半日程で、木ノ葉の里に着く時点で、僕らは一時的に休憩を取っていた。林の中の一角で、各々軽く体を休める。水筒を出そうと、背負った荷を開く。
すると、数日間の任務に備えた荷物の中に、いつも使うノートが入っていた。どうも慌てて荷を揃えた時に紛れ込んでしまったらしい。
僕は、中身を確認するように、取り出してぺらぺらとめくった。着けていた仮面をほんの少しずらし、大木の幹に背を預けた。水筒の水を飲んでいると、誰かが近付く気配を感じた。
「何、それ」
振り向くと、狐の面を付けた男がいた。
今回の任務の隊長である、はたけカカシだった。彼はこの部隊において、僕の先輩に当たる人だ。
「これですか?日記帳のようなもの、ですかね」
「へぇ。お前、日記なんか書いてるの?」
「日々の記録というか、まぁちょっとした趣味です」
彼はちらっと、紙面に目を向けてすぐにこちらを見た。
「そう言うのって、落としたらまずいやつじゃないの?」
「すみません。出し忘れてしまって」
彼の声の調子が落ちたことに気付いて、詫びを入れる。日記など、個人が特定出来る代物の最たるものだ。仮面をつけて行う、この部隊の任務には不要だ。
「ま、今回は相当緊急だったから、仕方ないか。お前らしくもない」
立て続けに入っていた任務を考慮してか、彼はそう言った。忙しい身の上を、さりげなく気遣ってくれたようでほっとする。