第24章 巡る季節
季節は確実に巡っていく。
教え子の成長の速さを目の当たりにし、何故か急かされるような思いもした。
迷いつつ進めていた授業は軌道に乗り、教師としての業務に滞りはない。それどころか、最近は気になる人と知己となり、細々と交流が始まったところだ。
前回会ってから半月ほど経って、またテンゾウさんからの連絡が届いた。少し長くなった文面には、次の約束も記されている。
自宅の窓辺に白い鳥が舞い降りたときは、本当にドキドキした。何せ自分宛の手紙を、連絡鳥から受け取るのは初めてだった。
鳥は小首を傾げるような仕草をして、窓の桟に留まっている。嘴(くちばし)にくわえられた封書を私がそっと受け取ると、鳥はすぐさま窓辺から飛び立った。
その姿をしばらく見送り、白い封筒に目を落とす。
表には私の名前。裏には「テンゾウ」とある。
私は彼の名前を、指でそっと撫でた。
(本当に送ってくれた…)
彼はとても忙しいはずなのに、約束を守ってくれている。
顔が見られそうなその日まで、後三日。
私は一人落ち着きのない日々を過ごした。
*
三日はあっという間に過ぎ、待ちに待った日がやってきた。
私は業務を猛スピードで終わらせて、商店街へと向かう。
テンゾウさんは、私の空き時間を考慮してか、夕方頃を指定してくる。今回はあまり時間が取れないらしく、公園で話でも出来ればと私は考えていた。
公園で話すならお茶菓子をと、今日は「甘栗甘」に寄ってみる。ここは甘味処でお団子が評判のお店だ。
夕方まだ日が落ちる前、私はいそいそと数本のお団子を買ってお店の外に出た。すると、若い女性に声を掛けられた。
「ねぇ、貴女」
振り返ると、赤い瞳に少し癖のある長い黒髪をした綺麗な人がいた。赤い口紅が生える、目鼻立ちのはっきりした美しい女性。
「え、私ですか?」
「そうよ。嫌ね、貴女以外に誰がいるのよ」
その時周囲に他に人はいなくて、彼女は少し呆れたような表情をした。その後、ふふっと笑った。
「貴女、アカデミーの人よね。ナズナさん、だったかしら」
「え?何故私のことを?」
「良かった。間違いなかったわね。私は、夕日紅。第八班の担当上忍よ」
彼女は上品に微笑んだ。手にはこのお店の袋がある。