第22章 手紙
しばらくして、自分が請け負った書類の確認が終わり、一旦休憩を取ることにした。
給湯室で自分とイルカ先生の分のお茶を入れて、机に戻ろうとすると、左隣の席の女性教師が戻ってきた。
「ナズナ先生。…良かった、まだ帰ってなかったのね」
「お疲れ様です。ええ、まだ書類確認が残ってたので」
彼女の手には、一通の封書があった。
それを私の方に差し出してくる。
「これ、貴女宛てみたいよ。さっき連絡鳥が運んできたらしくて、代わりに受け取ったわ」
お盆を片手に持ち、私はその封書を受け取った。
封書の宛名には、「アカデミー教師・ナズナ様」と丁寧な文字で書かれている。裏を返しても、差出人の名前はなかった。
誰だろう?と考えていると、彼女は言った。
「ちょっと怪しいわよね。差出人の名前がないの。思い当たる人はいる?」
「さあ…ちょっと。わざわざアカデミーに手紙を送ってくる人なんて」
「そうよね。まあ、封を開けてみておかしな点があったら、火影様に相談してみるといいわ。もちろん私でもいいし」
「ありがとうございます。一度中を見てみますね」
彼女は授業の資料を手に、自分の席へと戻っていく。
私はお盆を自分の机に置いて、席に座った。
封書の表裏をまた見直してみる。
一つの湯呑みをイルカ先生の席に置くと、彼は少し疲れた顔をしてこちらを見た。
「あ、すみません。ナズナ先生。喉が渇いてたんですけど、なかなかキリがつかなくて…。ありがたい」
「いえいえ」
イルカ先生は一度席を立ち、体をぐっと伸ばしている。封書を手に考え込んでいると、彼が私の手元を覗き込んだ。
「あれ?何ですか、それ?」
「さっき連絡鳥が運んできたそうです。私宛なんですけど、差出人の名前がなくて…わざわざアカデミーに手紙を寄せる人に心当たりがないんですよね」
「どんな手紙なんですか?」
彼に問われて、もう一度それを見てみる。特に厚みもなく、至って普通の封書だ。
「宛名だけって、何だか果たし状みたいですねぇ」
体全体を伸ばし終えたイルカ先生が、また椅子に腰かけた。冗談めかしてそんなことを言っている。
「ええ!私に果たし状!?もう、冗談はやめてくださいよ。イルカ先生」
驚いて顔を向けると、イルカ先生は可笑しそうに笑っていた。