第21章 二つ三つ
「ところで、ナズナさんはどうですか?確か…アカデミーで教師をされてると」
彼がこちらに目を向けたので、私は驚いて目を瞬かせた。
頬が少し上気する。
「ええと…そうですね。新しい生徒が入学してきて、しばらくは忙しかったんですけど、今は落ち着いてます」
「そうですか。どんな授業を?」
「私は幻術と封印術の授業を受け持ってます。今回は極端な能力の差はなくて、ほっとしてます。年によっては、もう一人前に出来る子がいたり、全く初めての子もいますから」
「へぇ、幻術と封印術…」
私が受け持つ科目は、特殊な忍術を持つ家系の子などにはあまり必要とされないもので、場合によっては軽視されることもあった。中には欠席する子もいるくらいだ。
得意な分野に力を注ぐ方が大切だと思う半面、そんな風にはっきりと告げられると落ち込んだりもしていた。
「封印術は家系よってあまり使わない子もいるんですけど、幻術の対策は結構好評なんですよ。どんなものか少しは知っていれば、対処も出来ますからね」
「確かに」
やけに真面目に話してしまい、はっとする。
私はまたパンを一口食べた。
「…ごめんなさい。あんまり面白くないですよね、こんな話」
「いえ、興味深いです。僕は今の子たちがどれだけの知識を得ているのか、あまり知る機会がないんでね」
「そうですか?…うーん、でも…」
デートで話すような話題ではないと気づき、私は頭をひねった。
いつの間にか、人生相談のような様相になってしまっていた。相槌を打つ彼の穏やかな声に、つい促されるままに話している。