第7章 ムード作り * 真田 弦一郎
いや。
仁王にはもう頼む事はない。
「何でもない。気にするな」
「そうか……何かあったかと思ったんじゃが…?まっ、いいか」
あっさりと引き下がる仁王
助かった
さて《ムード作り》
俺の中である人物の名が浮かんだ
きっと、アイツならば茶化す事なく、真っ当な答えを用意してくれるであろう
期待を胸に図書室へと向かう
やはり、いたな。
日当たりの良い場所で読書をしている柳生
熱心に読書をしている柳生には悪いと思いつつも、俺にしては小さな声で柳生に声をかける
「どうしたんですか?」
ページの間にしおりを挟み、視線を俺に合わせてくれる
「すまない。相談があるのだが」
「私に……ですか?」
戸惑っているのであろうな
俺からの相談など考えたこともないのであろう
「お前しかいないのだ」
「私でよければ、いくらでも相談にのりますよ」
「うむ。実は……」
「なるほど。わかりました」
俺が説明している間も「うん、うん」
「そうですね」と相槌を打ちながら、真剣に聞いてくれた柳生
これは、きっと満足できる答えが得られる筈
「私が、教えましょう。レディーに対する心構え、そして大事なムード作りを……」
キラリン
柳生のメガネが光ったが、さほど気にする必要はないであろう