• テキストサイズ

黄色い花の冠を君へ

第13章 押してダメなら引いてみろ(キャラ)












というわけで私は旅行に来ている。勿論一人だ。数週間前に私はキャラに「しばらく温泉旅行に行ってくるから。」と伝えてある。その時はスマホをいじりながら「ん」としか返事していなかったけど後で聞いてなかったとか言わないかな…

しばらく後にアズリエルからキャラに「ノエラは最近知り合った男と一緒に行ったらしい」という偽の情報を流す。(今回はアズに余計な矛先が向かないように男はただの幻想)独占欲のキャラなら血相変えて来るだろうという算段

本当に来るのかな…?これまでの作戦をかわされた私は半ば疑ってる。もしかしたら旅行中には来なくて家に帰ったらお説教とかありそう、とか思いながら露天風呂に浸かっていた

「ふう…」

肩にパシャリと白く濁ったお湯をかけると普段の疲れがみるみる取れていく。疲労は形があるのだろうか、不思議だ。

「月が奇麗…」

キャラもここにいてくれたら…と少し寂しくなった。趣味じゃないかもしれないけれど絶対楽しくなるのに。これじゃあどっちが嫉妬させているのか、本末転倒だ。

しばらく堪能したからぼちぼち上がることにした。出された浴衣は素材がぱりぱりしていて普段ない肌の感覚

「………少し散歩でもしよう」

旅館は色々な所がライトアップされていて幻想的な雰囲気を醸し出す。なんだっけこれ、確か…鹿威しだっけ。威すって名前に書いてあるけど見た目は何とも可愛い。そうだ、キャラに写真送ろう。

カシャ

「うん。こんなもんか」

メッセージを送るとすぐに既読が付く。キャラは今何してるのかな?私のこと心配してるかな?怒ってるかな?その疑問は決して期待なんかじゃない。

「はあ、キャラのせいでせっかくの旅行も楽しめないよ…」

夕ご飯ができるまで部屋に戻ってテレビでも見よう


「え?」

「遅かったな」

ふすまを開けると気がかりだった張本人が畳に寝そべってテレビをつけてた

「え、キャラ、なんでここにいるの?」

「何か言いたいことは?」

「え」

「言いたいことは?」

テレビを消してこっちに体を向けたので割と真剣であることが分かる。

「………アズに聞いて来たの?」

「ああ」

「どう思ってたの?」

「は?」

「嫉妬してくれた?って聞いてるの!」

「…………それはお前が知ることではないだろう」

「は、なんでよ…」
/ 68ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp